2015年9月25日金曜日

連休最終日

土、日に、敬老の日と秋分の日を含み、5連休となったこの秋のシルバーウィーク。
ほんとうは、いつもの森の中でキャンプをして過ごしたかったのですが、家での雑用があり、泊りがけで出かけることができませんでした。連休最終日、あまりの天気の良さに居ても立ってもいられず、バックシートにカメラと三脚を放り込むと西へと、山の方向へと車を走らせました。

普段なら1時間ほどで到着できるはずの場所も、連休の為、道は渋滞......
向かった先は埼玉県立武蔵自然公園にある多峯主山(とうのすやま)標高は、ほんの271m。気軽に行け、遠くを見渡せるお気に入りの山です。隣にある天覧山にならび、秋には鷹の渡りを観察することができます。


シルエットの山並みが連なる景色が好きです。視野に入るこの風景の中に、どれほどの鹿や猪、熊が暮らしているのかをいつも想像しています。


森の中を歩くのはいいものです。この時ぞとばかりフィトンチッドを胸いっぱいに吸い込んでゆっくりと歩くのです。木洩れ陽を浴び、五感を砥ぎ澄ませながら。風景も気分を持っているはずです、風に揺らぐ草花や樹木からの気が、そう感じさせてくれるのです。


太い幹はいつも、どこからかジッと森に来る人間たちを見ている、そんな気がしてなりません。


緑を透過する太陽の光。森を走る鳥の影。鬱蒼とした森は生命力に溢れています。


秋に日陰に咲く不思議な恰好をした花はヤマホトトギス。


大小さまざまなキノコも顔をだす秋の森。


尾根に続く杉の小径。アラスカにこんな道があれば、かなりの確率で熊に遭うことでしょう。道の脇には猪が植物の根を掘り起した、いくつもの跡がありました。

森の出口で目にした注意書。


街へ戻り、高麗川沿いの巾着田へ。
自宅からそれほど遠くない場所なのに訪れたのは初めてでした。

曼珠沙華の花は満開。
夕方の光の中で、広大な土地を埋め尽くす真っ赤な花は神秘的に輝いていました。



2015年9月2日水曜日

偉大なる山



アラスカへは25年ほど通っただろうか?
その度に様々な角度から見上げ続けていた山、マッキンリー(6194m)。

僕にとっては、世界で一番思い入れがあり、一番好きな山です。

1896年、ゴールドラッシュのアラスカで金採掘者が当時の大統領候補者だったウイリアム・マッキンリーにちなんで名付けたという。翌年、ウイリアムは第25代合衆国大統領に就任した。

一方、アラスカ先住民であるインディアンたちはこの山を、「偉大なるもの」という意味のデナリ、と呼んでいました。

1975年からアラスカ州政府はずっとデナリという名前を公式に使うように働きかけており、僕が初めてアラスカを訪れた1988年にもアラスカンたちはマッキンリーという名前より、デナリの名に親しみを持ち、そう呼んでいたものでした。

先日、8月31日。オバマ大統領はアラスカを訪れ、Mt. Mckenly を Denali にすると宣言しました。


リフレクションポンドに映るデナリ。
何十年も何十回も通いつめた場所。アラスカ山脈の全貌が現れ、無風で水面に一筋の乱れもなく撮影することができたのはこの時だけ......

取り憑かれたように何本ものフイルムを詰め替えてはシャッターを切っていました。


ワンダーレイクとデナリ夕景。
夕日が沈み暗くなるまでワンダーレークを見下ろす丘の上で撮影していました。
昼間、何度かクマを目撃した道を、ヘッドランプの光だけを頼りに1時間ほど歩き、テントへと戻るのはなかなかに緊張感があるのです。


ルース氷河上でキャンプをしていた厳冬期。デナリの上に現れた二重のレンズ雲。



空からみたデナリ。この一つの山自体はエベレストよりも大きいのです。


ツンドラの彼方からの光が徐々に山肌を染めてゆきます。雪で真っ白なはずの北壁、ウィッカーシャムウォールが真紅に変わった瞬間。これほどにまで紅い山を見たのは後にも先にもこの時だけ。

動物たちはこの光景を見ているのだろうか?そんなことを考えながら紅い山を見つめていました。


左の肩に三日月がのぼり。遠くからはオオカミの遠吠えが聞こえてくる。

ドン!と腰を据え。ツンドラの荒野を見渡しているこの大陸の最高峰は偉大な山だと思います。
デナリ ー偉大なるものー ようやく、その様相にふさわしい名前に戻ったのだと、なんとなく嬉しい気分になったのです......