3月3日。
アンカレッジ〜ノームへと続く1600キロに及ぶ犬ぞりレース、アイデタロッドがスタートした。
アラスカに暮らしている友人、今野道博が今年、エントリーをした。
スプリントの犬ぞりレーサーだった彼は、1998年オープンノースアメリカのスピードレースで世界チャンピオンとなる。日本から参戦した彼は、現地で犬を借りて即興で作ったチームで見事優勝した。新聞には一面に、レンタカーでインディ500に優勝したようなもんだ!と紹介されルーキーを讃えていた.....
初めてアラスカを訪れた30年前、アンカレッジではちょうどアイデタロッドのスタートだった。ダウンタウンはスタートを見ようと詰め掛けた人々で溢れ、興奮する犬の吠える声で厳冬期だというのに辺りは熱気で包まれていたことを覚えている。
2003年、オープンオースアメリカを走る今野道博(Michi Konno)
道さんとの出会いは20年ほど前にさかのぼる。フェアバンクスでオープンノースアメリカのレース初日、撮影をしている時にお互いの知り合いだった冒険家の船津敬三さんに紹介された。
その後、数年の時を経て、ガイドの仕事でアラスカを訪れた時に現地ガイドとして現れたのが彼だった。そしてガイドの仕事を共に、さらには共通のスポンサーを持ったことで僕が道さんの出場するレースの撮影を担当することになった。
いつかアイデタロッドに出場する。あの頃、よくそんな話をしていた。
彼のアラスカのホームでもあるマンリーのレース。
犬命の彼。過酷なレース中でも、ふと、優しい表情を見せてくれることがあった。
レースに向かう道すがら、いつも彼のドッグトラックを後ろから見ていた。厳冬のアラスカの荒野をゆく「侍魂」の二文字が刻まれたピックアップに、熱い男のロマンを感じていた......
レースの勝敗などどうでもいい、いくつになっても夢だけで生きている、そんな姿を見せ続けてほしい。