クルーズ船の近くをゆくザトウクジラ
数日前のこと。釜山発、福岡行きの国際旅客船がクジラと衝突して負傷者が出たらしい。
船は近くにいた海上保安船に引かれ釜山へ戻ったという。
大きな船が怪我人がでるほど衝撃を受けたということはクジラも相当なダメージだったはずだ。生きているだろうか。
アラスカのグレーシャー・ベイでもクジラと客船の事故のことを何度か聞いた。
アラスカやカナダ沿岸部は夏の間のクジラたちが過ごす格好の餌場となっており、その素敵な景観から多くの客船が氷河クルーズに訪れる場所でもある。
餌を求めて入江に入って来るクジラと、入江の奥に広がる氷河を見に訪れる客船との接触事故はまれに起こる。
僕がグレーシャー・ベイを訪れていた時、ザトウクジラの子供が客船とぶつかったという話を聞いた。子クジラは死に、岸に打ち上げられたという。
母クジラと大海を回遊し、餌場であるアラスカの海へやって来た子クジラを待っていたのは、豊潤な北の海の恵みではなく、死であったとは。
その後、浜辺に打ち上げられた子クジラは、クマや白頭鷲たちの突然手に入った、思わぬ食料となったようだ。
交通事故は広いと思われる海上でも起こる。
船などない時代から生きているクジラたちには災難であるに違いないが......
天気のいい日中、海にふわふわと浮かび昼寝をするクジラの姿を見かけた。
夕日に浮かび上がるブロア(噴気)カヤックでクジラの後を追う時、何度もこのブロアを浴びた。生臭い、いきものの匂いがした。