2012年8月31日金曜日

秋のデナリでの出来事


8月の終わりに撮った写真。紅葉のピークを迎えたデナリ国立公園。一面の赤はブルーベリーと白樺の紅葉、風に流れる雲の影が絶妙なコントラストをつける中、ブルーベリーを食べるグリズリーが点景となり涙が出るほど美しい光景だった。

野生動物との距離—Natural distance—はお互いに危害を与えることのない調和のとれた距離とでも言えるだろうか。多くの人が訪れる国立公園ではその距離感が少しおかしいという話を聞いたことがある。

先週、デナリ国立公園でクマの事故が起った。
数えきれないほど通った大好きな国立公園で人命にかかわる事故が起きた。
1917年の公園設立以来、今年まで人命に関わる事故はなかったのだが、一人のハイカーが命を落とした、.........そしてクマも。

アラスカではクマとの事故は毎年のように起っている、人間の命に関わる事故もあれば怪我で済んだものも多い、笑ってしまえるようなものまで様々である。アラスカのみならず他の州でもクマの事故は起っているし、我が国ですらクマとの事故は少なくない。クマが暮らしている国であれば必ずと言っていいほど何らかの事故が起っていることは事実だ。

しかし、クマ以外の野生動物との事故、犬の事故、いや、それ以上に車や乗り物の事故に遭うケースの方が何百倍、何千倍も多いこと、これもまた事実なのです。

人の命を奪ったクマは、必ずその命を奪われる。本来、自然の中で静かに生きている動物が、そこを訪れた人間を傷つけてしまえば、悲惨な目にあうという何とも言えない矛盾がある。

そして相手がクマという誰もが知る動物だけにイメージは膨らみ恐怖心を仰ぐことになってしまうだろう。が、一方的にクマを悪者視することは僕にはできない。

本当に、自然の世界を求めて荒野へ行くのなら、ある程度のことは覚悟しなければならないと思う。お互いに命を落とすことも、それは一概に、悲惨な話としては終わらせることの出来ない自然界の掟であるはずだ。

この秋のアラスカでのひとつの出来事は悲しい知らせであると同時に、場所や時代を問わず、野生の掟は自然の中では続いていることも告げていた気がする。



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